Building of Music
プロジェクト一覧に戻る- 場所
- 東京, 日本
- 年
- 2022
音楽教室・楽器販売・倉庫・本社機能を含む、歴史ある音楽会社の自社複合商業ビルの計画。
楽器の街で知られる神田お茶の水エリアの細かく複雑な形の敷地に、ピアノやバイオリンなどの音楽教室、発表のためのホール、プロ向けの録音機材ショップ、楽器の卸売り倉庫、それらを運営するオフィスなどの様々な用途諸室を効率的に積層させた建築が求められた。
各階の遮音と眺望、採光と遮光、利用時間などの条件がバラバラな上、将来の変更可能性も高かったため、正面ファサードは各室の使用状態や窓の開閉状態に関わらず全体としての統一感を保てる2枚目のスキン付加を考え、上空にスウェイするだけでなく左右にも容易にラウンドできて天空率計算に優位な3次元特性をもつ膜材、その中でも光だけでなく風も通し、外からは見えずとも中から外は見える、孔の開いたメッシュ状の膜を採用することにした。
メッシュ膜はポリエステル繊維にポリ塩化ビニル樹脂をコーティングした外装用の防炎製品で、外からの目隠し効果を保ちつつ室内からは外界への視界を確保し、33%の日射反射率で空調負荷を約28%削減できる。膜材につき三次元曲面も可能で、軽量かつ開孔形状により自重も風圧も構造負担が少なく、落下危険性もないため交換や維持管理も容易でリユースも可能。
コロナ禍で、視線を気にせず換気を行えるファサードの説得力はさらに増すことになった。
また、変形敷地と斜線制限に合わせて分解したその他のボリュームや、避難階段・バルコニー・設備配管などの必要機能は、音楽会社の自社ビルを表象すべく、様々な楽器の一部に見立て、最大容積を確保しながら再統合。メッシュのかかった正面ファサードには「街に音楽を発信するスピーカー」というもう一つの意味を与え、それ自身が大きなメディアでもある建築の記号性に改めて期待している。